奈良市にある秋篠寺(あきしのでら)は、第49代天皇・光仁(こうにん)天皇の勅願により奈良時代の僧・善珠(ぜんじゅ)が宝亀7年(776年)に創建したとされています。
光仁天皇といえば、壬申の乱以降、百年ほど続いた天武天皇系の皇統が天智天皇系へ移った(戻った)天皇としても知られています。
光仁天皇は、天智天皇の第七皇子・施基親王(志貴皇子)の第六王子として誕生。つまり、天智天皇の孫です。768年、称徳天皇の崩御にあたり皇太子に立てられ、同年62歳という高齢で即位(現時点で最高齢)。光仁天皇の長男は第50代天皇・桓武天皇です。
称徳天皇は、道鏡(僧でありながら皇位を狙った悪党として「日本三大悪人」のひとりに数えられる)を寵愛したことで政治に混乱をきたし、宇佐八幡宮神託事件でも知られます。
お寺の創建時代の背景を考えながら拝観すると、想像力が広がって楽しいですよね。
秋篠寺 南門
秋篠寺周辺は民家や雑木林が広がる静かな場所で、道も狭いので車で行く場合は要注意です。バスが近くまで走ってます。近鉄「大和西大寺」駅から押熊行「秋篠寺」下車すぐ。徒歩だと「大和西大寺」駅から20分ほど。私はいつもバスか徒歩です。
苔生した庭を通って本堂へ。
庭を抜けると受付が見えます。
本堂(国宝)
本堂内には秋篠寺の代名詞、伎芸天(ぎげいてん)がお祀りされています。
伎芸天は、インド神話のシヴァ神が楽器を奏でていたとき、その髪際から生まれたといわれている天女です。
容姿端麗で舞踏・器楽の技芸が群を抜いていたため、諸芸成就の功徳が有るとされることから芸能関係、アーティスト、クリエイターから篤く信仰されています。
「東洋のミューズ」と称賛されるほど美しく、私も大好きで、仏像好きになったきっかけの一つです。
伎芸天立像(重要文化財)
像高204cm
頭部は天平時代の脱活乾漆造、体部は鎌倉時代の寄木造。
脱活乾漆造(だっかつかんしつぞう)
粘土で原型をつくり、その表面に麻布を貼り固め乾燥させた後、像内の粘土を除去し中空にして、麻布の表面に漆木屎を盛り付けて塑形する仏像制作技法。
奈良・天平時代に最盛期を迎えた彫刻技法だが、制作に時間がかかり、高価な漆を多用するため、平安時代以降はほとんど作られなくなった。現存の作例数は極めて少ない。
頭部と体部が異なる時代に作られているということは、当然作者も違うわけで、しかしそうだと教えられるまで分からないほど、違和感なく見事に調和しています。
秘仏・大元帥明王(だいげんみょうおう)像が安置されている大元堂
大元帥明王は、古代インド神話の弱者を襲って食べるという魔神アータヴァカが前身とされていますが、仏教では絶大な力を持って国家を守護する明王です。全ての明王の総帥という意味から大元帥と呼ばれています。
秘仏・大元帥明王像
鎌倉時代作
一面六臂の憤怒相。
大元帥明王像は秘仏のため、年に一日6月6日のみ公開されています。
<秋篠寺>
【住所】奈良県奈良市秋篠町757
【電話】0742-45-4600
【時間】9:30~16:30
【拝観料】500円
【特別開扉】6月6日 大元帥明王像
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